大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和48年(ネ)274号 判決 1974年5月13日

控訴人

高橋卯之助

右訴訟代理人

岡田正美

大塚泰紀

東京高等検察庁検事長

被控訴人

布施健

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取り消す。本籍および最後の住所神奈川県南足柄市広町八六〇番地亡高橋新太郎を養親、本籍東京都板橋区板橋町六丁目八七七番地亡内藤牧三郎を養子とする同人ら間の明治二六年六月二一日届出にかかる養子縁組は無効であることを確認する。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、主文第一項と同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張、証拠の提出・援用・認否は、次のとおり付加訂正するほかは、原判決の事実欄に記載のとおりであるから、これを引用する。

控訴代理人において、「本件養子縁組については、明治二三年法律第九八号民法人事編の規定が慣習法ないし条理として法源となり、それらの規定が適用されるべきである。そうすれば、前記新太郎と牧三郎間の養子縁組は、高橋ツルの承諾なきものとして無効といわなければならない。」と陳述した。

原判決二枚目表六ないし七行目の「第一一〇条第一項に違反し」とあるを「第一一〇条第一項の精神に違反し」と訂正する。

理由

一当裁判所は、控訴人の本訴請求は理由がないと判断するが、その理由の詳細は次に付加するほかは原判決の理由欄に記載のとおりであるから、これを引用する。

二控訴代理人は、本件養子縁組については明治二三年法律第九八号民法人事編の規定が慣習法ないし条理として法源となり、それらの規定が適用されるべきであると主張するが、明治二六年当時の養子縁組についての慣習法としては、通常の場合は、養父となる者と養子となる者あるいはその者の実父との間の契約によつて縁組がなされ、養父となる者の妻は法律上右契約の当事者ではなく、その夫が養父となるとともに当然に養母たる身分を取得し、夫が養子をするには妻の同意を必要としなかつたか、少なくとも妻の同意のないことは養子縁組の取消し事由ではなかつたことは、前記のとおりであり、したがつて、明治二三年法律第九八号民法人事編の一一〇条一項本文はわが国古来の慣習法とは異なつた外国法を継受して起草せられたものに過ぎないことは明らかである。そうすれば、同条が慣習法ないし条理として当時のわが国の養子縁組につき適用されるという控訴人の主張の理由のないことは明らかである。

三よつて、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり、控訴人の控訴は理由がないから、これを棄却すべきである。そこで、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(満田文彦 真船孝允 鈴木重信)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例